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<広がるか賃上げ 2015年春闘>
大手と値上げ交渉を 中小ベア実現のカギは?

中日新聞掲載記事「大手と値上げ交渉を」

―なぜ中小企業は賃上げが厳しいのか。

「円安で大企業は為替差益が出ているが、中小企業は仕入れコストの上昇で収益が圧迫され、賃上げに振る向ける原資がない」

―トヨタ自動車は下請けの部品メーカーに取引価格の値下げ要請を見送って、賃上げに配慮しているが。

「値上げの見送りではなく、製品への価格転嫁、つまり値上げを認めてもらわないと賃上げはできない。だが中小が大手と対等に価格交渉するのは難しく、大手のメーカーやスーパーなどのバイヤーが価格の決定権を握っている。安部政権は(大手から中小へ恩恵がしたたり落ちる)トリクルダウンを掲げるが、『元栓』を緩めないと恩恵は行き渡らない。自由競争のままでは格差は改善せず、踏み込んだ対応が必要だ」

―打開策は?

「中小の労使が賃金交渉に入る前に、中小が大手に対して、一斉に製品の価格交渉を行う『下請け春闘』をやるべきだ。個々の中小企業は立場は弱いが、まとまって話し合いに臨めば、交渉力も高まる。行政指導が必要かもしれないが、交渉結果を開示するよう義務付ければ、オープンに交渉できるのではないか。希望する単価の見積書を提出し、円安による原材料費の上昇など、正当な理由があれば値上げを認めてもらう」

―どれほどのインパクトがあるのか。

「仮に、トヨタが二兆一千億円の純利益の1%に当たる二百十億円を、購入する部品の値上げに充て、下請けがそれをすべて賃上げの原資に使ったとしよう。連合は定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせて4%以上の賃上げを掲げている。賃上げ率を3%とすると、月収が二十八万円ほどの人なら、月額で八千円の賃上げになる。年間の賃上げ額は十万円ほどだから、原資が二百十億円あれば約二十一万人の賃上げができる計算だ。中小企業がベアをやるには、部品単価のベアが必要だ」

(2015年2月5日 中日新聞)