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タバコ部屋の面々は「年35万の給料泥棒」許せるか

プレジデントオンラインで、北見昌朗の執筆した記事が掲載されました。
『タバコ部屋の面々は「年35万の給料泥棒」許せるか』です。
お読み下されば幸いです。

そもそも「勝手にタバコ休憩して給与をもらう」は認められるか?

勤務時間中は「禁煙」に賛成?反対?

大阪市では、橋下徹市長が勤務時間中は「禁煙」とする方針で、勤務時間中に喫煙した職員を処分したのだという(今年6月)。民間では、禁じている企業もあれば、黙認している企業もあり、様々だ。

そんな訳で、勤務時間中の禁煙についても意見が分かれるようで、2008年3月の「Yahoo!ニュース 意識調査」(http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/domestic/2002/result)では64%が禁止に賛成した。喫煙者にとっては肩身の狭い時代になった。喫煙は本人の健康管理の点からも問題になっているが、周囲の禁煙者からも「受動喫煙だ」と文句を言われかねないのが弱いところだ。だが、愛煙家も多いようで、32%が反対した。

ちなみに喫煙率は、年々低下傾向。男性は平成4年50%、14年43%、24年34%へと急落して、全年齢で下がっている。それに対して女性は若年層では逆に上がっている。

そこで勤務時間中の喫煙は、そもそも良いのか悪いのか、という議論をしてみよう。あなたの職場には、こんな賛成派・反対派はいないだろうか。

【禁止に賛成】「勝手に職場を離れるなよ」(36歳男性・商社)

「うちの会社は、おかしい。同僚の中に勤務時間中に喫煙する人がいる。それも1日の何本も吸うので、頻繁に職場を離脱する。タバコを吸える場所が遠いので、行って帰って来るのに10分は要る。その間、吸わない人は黙々と仕事をしている。それなのに会社は吸っている人に何も言わずに黙認している。これで同じ給与なのだから、おかしい」

【禁止に反対】「愛煙家だって権利があるはずだ」(42歳男性・メーカー)

「私は年々肩身の狭くなっている愛煙家だ。うちの会社は、勤務時間中の喫煙は、工場では禁止されているのに、事務所では黙認されていて、机で吸っている。工場長はタバコが大嫌いだから、休憩中でも工場内で吸わせない。ところが社長はヘビースモーカーで、事務所で遠慮無く吸っている。私は残念ながら工場で勤務しているので、吸わせてもらえない。朝8時から12時までの4時間、13時から17時までの4時間に禁煙することは、地獄だ。生理現象だから我慢できない。どうか認めて欲しい」

ちなみに著者は30歳までヘビースモーカーで、それ以降はぱったり止めた。だから双方の気持ちがわかる。

このタバコ休憩は、単に吸うか吸わないかという問題を超えて、給与の支払いや労務管理の問題にまで発展する要素をもつ。使用者側と労働側という立場に立てば、次のような言い分だってあり得るだろう。使用者なら、次のように言いたいところだ。

【禁止に賛成】「そもそも人件費のムダになるんです」(50代・経営者)

「社員の中でタバコ休憩を勝手に取るある20代の男性がいる。彼に『タバコ1本でいくらすると思うのだ?』と問い質したことがある。すると彼は少し考えて『1本20円ちょっとです』と答えた。まったく、もう! 全然わかっていないのだ。私が言いたかったのは、タバコ代ではなく、人件費の方だ。

彼の給与は月額17万円だ。うちの会社の勤務時間は月間170時間だから、彼の時給は1千円だ。彼は1日、タバコ休憩を6回取っているとすれば、毎日1千円の人件費がムダになっている計算になる。それが年間250日あるとすれば、年間25万円になる。社会保険料や賞与だってあるのだから、実質的には35万円以上が煙になって消えている。大きな損失だ。ところが彼は何度注意しても止めようとしない。他の社員に示しが付かないから、これからは就業規則で勤務時間中の禁煙を明記したい」

だが、社員には社員の言い分だってあるだろう。あるとすれば、こんな感じだろうか……。

【禁止に反対】「そこまで細かく言わないでほしい」(33歳男性・保険)

「確かに私は勤務時間中にタバコを吸っていて職場を離れることがある。だけど、そこまで細かいことを言うならば、トイレ休憩を何度も取っている人はどうなんですか? オシッコが近い人は、やたらに頻繁にトイレにいくようだ。トイレは良いけどタバコはいけないという理屈がわからない。やってはいけないことだけど、勤務時間中にメールしている人だっている。それから、うちの会社は始業前にラジオ体操をやって、朝礼をしているけど、それだっておかしいはず。社員に細かいことを言うのならば、会社もきちんとしてほしい」

目には目を、歯には歯を、という言葉があるが、会社が細かいことを言い出すと、社員の側も細かいことを言い出しかねない。仮に始業前に朝礼をさせていたとするならば、その時間がサービス残業だったという主張だってありえるのだ。

会社は、社員にきちんと働いて欲しければ、きちんと給与を払う義務がある。使用者には、始業前の朝礼をさせる時代ではなくなったことを知るべきだろう。休憩時間も午前10分、午後10分ぐらいを設定して一斉に休ませることも検討に値するかもしれない。お昼休みがその分短くなるかもしれないが、それも仕方がないかもしれない。

時は金なり。1回の所要時間数分の喫煙もトイレも塵も積もれば山となる。経費削減が好きな経営者はこれまで暗黙の了解で許可されていた喫煙・トイレ休憩の「聖域」に今後メスを入れる可能性はゼロではないかもしれない。

北見昌朗 きたみ・まさお
歴史に学ぶ賃金コンサルタント
名古屋の北見式賃金研究所長。これまでに就業規則を500社以上作成した経験から「労基法は昭和22年制定であり現代に合わない部分が多過ぎる」と持論。
http://www.syugyokisoku.net/