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働き方改革の“裏側”
さあ困った! 消える、残業代。
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労基法改正が国会で決まり、残業時間が厳しく抑制される見込みです。では、実際にはどんな影響が出るのでしょうか?
北見式賃金研究所は、中小企業の正社員の給与明細を集めた調査「ズバリ! 実在賃金」を毎年作成しています。それを見れば、実際の残業時間数がわかります。
平成28年度 愛知県版のサンプルは205社、1万7391人でした。その中で「製造業 一般男性社員(管理職除く)」のみを抜き出すと5094人でしたので、そのデータを使って検証してみました。
別表①は、その残業時間数を示すプロット図である。横軸は年齢で、縦軸は残業時間数だ。これを見ると、残業時間は30時間以上50時間以内が多いものの、中には80時間超も少なくないのがわかる。
横に赤い線を引いたが、これが30時間の線だ。
Q 36協定違反は何%いるのか?
残業時間は通達により「年間360時間(月間45時間)以内」と定められています。この意味は、ある月は45時間の残業があっても良いが、他の月を減らすことにより、年間360時間以内でなければいけないという意味です。つまり月間平均30時間以内であることが必要です。
それを超える場合は特別条項付きの36協定の提出が必要です。その特別条項にも「年間720時間以内」とか「年6回以内まで」などの制約が法制化される見込みなので、単純に毎月60時間の残業をして良い訳ではありません。
だから問題になるのは「月間30時間超」の残業をしている社員です。それは調査対象者中の52.9%いて、過半数でした。
Q 年間360時間(月間30時間)を厳守したら、いくら残業代が減るのか?
残業を多くしている社員がその残業時間を抑えたら、当然のことながら残業代が減ります。どれだけの減収になるのか気になりますが、月額5万円減はザラでした。年収で言えば数十万円減ですから、家計に影響を与えそうです。
そう言えば、第一生命のサラリーマン川柳にこんなのがありました。
「残業をするなと会社 しろと妻」(せな君パパ)
Q 年間360時間(月間30時間)を厳守するため何%の増員が要るのか?
残業を抑制するとしても、問題はオーバーする仕事をどうするかです。もし生産性を向上できなければ増員が必要になります。その「月間30時間超の残業時間」を増員で対応するとすれば、何%の増員が必要なのかを計算しました。出てきた答えは16・1%でした。中小企業が求人難に苦しむ中で、これだけの増員が可能なのかどうかクビを傾げる向きもあるでしょう。
残業減は、社員にとっても、会社にとっても影響があります。法が施行されたら、自社にどんな影響が出そうなのか研究しましょう。
- 話のポイント
- 「月間30時間(年間360時間)」超が過半数占めるのが中小企業の実態
- 残業代減で家計は苦しくなる
- 生産性を向上できなければ大幅増員が必要