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「東京都 中小企業賃金・退職金事情」に不正調査の疑惑あり!

北見式賃金研究所 北見昌朗 平成31年2月

「東京都 中小企業賃金・退職金事情」に不正調査の疑惑あり!

東京都は、都内の中小企業の賃金・退職金を調査して発表している。 中小企業の賃金・退職金事情 ※画像クリックで東京都産業労働局サイトへ移動します

しかしながら、調査の結果を詳細に見ると、ありえないようなデータが載っている。本当に正しく調査された結果なのか、その検証を求めたい。

検証にあたっては、弁護士を含めた第三者委員会を設置して公正に行ってもらいたい。

疑惑その① 本当に調査したのか?

ホームページによると、1060社が郵送によるアンケート調査に応じたことになっている。その現物を確認することで、本当に調査したかどうかの確認を求めたい。

調査の対象方法 調査対象企業の内訳

疑惑その② モデル賃金は本当なのか?

「モデル賃金」を載せているが、そもそも「モデル賃金」は新卒で入社して、標準的に昇進して、定年まで勤務した人に関する賃金である。サイトでは、このように記載されている。

モデル賃金

しかしながら、小規模な企業は、会社自体の歴史が浅いところが多いし、新卒採用が出来ていないところが多いので、そのモデルに該当する社員があまり実在しないのが現実だ。

「従業員10人~49人」のデータとして、次のように載っているが、本当に”該当者”がいたのかどうか確認を求めたい。特に「55歳 高校卒 所定内賃金400,545円」となっているが、その調査サンプルが本当に“71社”実在しているのか確認を求めたい。

モデル賃金(企業規模別)

疑惑その③ 実在者賃金は本当なのか?

「モデル賃金」に対比する言葉として「実在者賃金」がある。「モデル賃金」が標準的に昇進した場合の“理論値”であるのに対して、「実在者賃金」は源泉徴収票の金額を元にしたものだ。源泉徴収票だけに、その信頼感は高い。

ホームページでは、次のように記載されている。

平成29年年間給与支払額

しかしながら問題はそのデータである。例えば、こんなデータが載っている。「高卒 男性 年間給与支払額 6,100,179円」というのは、実態と大きく乖離している気がする。

学歴別賃金

別の賃金調査だが、国税庁の「平成20年 民間給与実態調査」によると、東京国税局管内の「男性 年収」は次の通りである。「第3表 国税局別及び企業規模別の給与所得者数・給与額」。全年齢の平均年収。

http://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2017/minkan.htm
資本金 平均年収(千円)
2千万円未満 4,893
2千万円以上 5,258
5千万円以上 5,079
1億円以上 5,927
10億円以上 7,428
6,079

この東京国税局のデータは「正規社員」のほかに「非正規社員」の分も入っているので、単純比較はできないが、それでも「高卒 男性 年間給与支払額 6,100,179円」というのは、実感とかけ離れていると思う。

北見昌朗は、このように想像する。

アンケートに回答する会社が「高そうな社員の賃金」を選んで記入している。つまり、アンケートの記載内容が実態を表していない。

東京都の統計担当の職員が「低そうな賃金」を除外して平均値を算出している。つまり、統計をまとめる際に恣意が入っている。

ちなみに、(株)北見式賃金研究所は平成17年度から毎年、実際の賃金明細を集めて「ズバリ! 実在賃金」という統計を作っているが、それによると、こんな年収になっている。これは通勤手当のみを除外した年収である。サンプル数は1万人以上である。

平成29年(東京都内 社員300人未満の中小企業 単位千円)
一般男性社員 50歳 5,078
一般女性社員 50歳 4,083
管理職 50歳 7,120