給与のココが問題! Q&A
社長 | 当社は卸売業です。営業外勤者には、残業代の意味合いも含めて営業手当を払っています。その残業代の額は一般の営業担当者は月額30時間分です。1人ずつの給与をもとに計算して、ちょうど30時間分になるように残業代を設定しています。 ところが某元社員が辞めた後で労働基準監督署に駆け込んで、サービス残業があったと訴えました。残業をしても、きちんと残業代を支払ってもらえなかったと申告したのです。労働基準監督署の人が当社を訪れて、元社員の勤務実績を調査して、残業代の不払いがあったと指摘してきました。だが、当社としては、その指導の内容に納得がいきません。 |
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北見 | 出勤簿はありますか? |
社長 | これです。 |
北見 | きちんと勤務時間の始業・終業時刻が記載されていますね。これは本人直筆ですか? |
社長 | これです。 |
北見 | きちんと勤務時間の始業・終業時刻が記載されていますね。これは本人直筆ですか? |
社長 | はい、直筆です。出勤簿への記載は毎日させていました。 |
北見 | これを拝見しますと、残業時間は次のようになっていますね。だいたい、平均すれば30時間未満ですから、残業代は未払いどころか、逆に過払いですが、本人は何を要求しているのですか?
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社長 | 1月に31時間働いたのだから、1時間分の残業代が未払いだというのです。 |
北見 | ナルホド。 |
社長 | 1月に31時間働いたのだから、1時間分の残業代が未払いだというのです。 |
北見 | ナルホド。 |
社長 | でも、1月2月3月の残業を合計すれば、70時間であり、それを平均化すれば、23.3時間分の残業代で良いはずですよね。だから残業代は逆に過払であり、不払いはないというのが会社の言い分です。 |
北見 | なるほど、お気持ちはよくわかります。でも労働基準法の観点からすれば、会社に問題があります。労働基準法は、給与の支払い5原則というものを決めています。その内容は次の通りです。 その①通貨払いの原則(給与は通貨で支払わなければならない) |
社長 | といいますと―。 |
北見 | 給与は毎月、全額を支払うという定めがありますので、それに違反しています。1月は1時間分の残業代が未払いです。 |
社長 | でも、2月および3月は、残業代が逆に過払いではないですか? |
北見 | それは残業代を必要ないのに支払ったという扱いになるだけです。 |
社長 | ということは、単に残業代をくれてやっただけですか? |
北見 | そういうことになります。だから法律論では、1月分の残業代が不払いという法の解釈になるでしょう。 |
社長 | そんなことなら、こんな固定の残業代など支払うのは止めます。給与の規程の見直しを行います。 |
- <給与の実践コンサルタント北見昌朗のホンネのつぶやき>
- 「営業外勤者などの職種は、残業代を固定で払っている企業をよくみかける。だが、実際問題として、そのような残業代の払い方は企業側にとってもメリットはない。残業代は、残業した分だけ支払えばよい。労働基準監督署はこの固定の残業代に目を見張らせるようになっており、調査の1つの項目になっている。ここで1つの問題が生じ得るが、それは初任給である。初任給の中に営業手当が入っていて、それを外したら初任給として低過ぎるという問題が生じる場合もある。そんな場合は新入社員時代のみ固定の残業代を支払うこととして、一定期間過ぎれば、やった分だけの残業代に切り替えればよい」