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中日新聞(平成28年2月6日付)に、北見昌朗のコメントが載りました。

週刊文春2016年1月28日号

「アベノミクスで大手と中小の年収格差が拡大」

2012年12月に誕生した安倍政権の経済政策「アベノミクス」の前後で、大企業では年収800万円を超える層が大幅に増えた一方で、中小企業では年収の増え方が緩やかなペースにとどまっていることが、北見式賃金研究所(名古屋市)の調べで分かった。

全国の民間企業で1年を通じて働いた人を対象にした国税庁の「民間給与実態調査」を使って、正社員の年収を三つ(①400万円以下②400万円超~800万以下③800万円超)に分類。それぞれの区分に当てはまる働き手の数が、大企業と中小企業で2012年から2014年にかけて、どれくらい増減したか比べた。

資本金10億円以上の大企業で最も増加率が大きかったのは、年収が800万円を超える層で、12年と比べ15%増えて177万人になった。また400万円超~800万円以下の層も2%増えたほか、400万円以下の層も7%減少。年収が低い層が減り、年収が高い層にシフトする傾向がみられ、全体として改善が進んだ。

これに対し、資本金が2000万円未満の中小企業でも、同様の傾向が見られたが、改善の度合いは大手よりも鈍い。年収が800万円を超える層は2%増にとどまったほか、400万円以下の層は1%しか減らなかった。最も増加率が大きかったのは、400万円超~800万円以下の層で9%増えた。

一方、全規模の企業で雇用者数の変化を見ると、正社員は12年から3%増加。非正規社員は10%増え、非正規の方が増え方が大きかった。このうち、年収100万円以下の女性の非正規社員に限ると、7%(18万人)増えた。主婦パートらが増えた影響と見られる。

北見昌朗所長は「円安によって、大企業はメーカーを中心に輸出採算が改善したが、中小企業は内需型が多く、円安による輸入原材料の値上がりが逆風となった」と分析。「アベノミクスで大手と中小の年収格差は広がった」と指摘する。