「定額残業代」のため基本給の低さがスッポンポンに
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名古屋商工会議所の会報誌『那古野』(平成28年3・4月号)に北見昌朗が記事を投稿しました。今年は、連載になります。
第1回目 初任給を見直そう「金額だけでなく内訳も問われる時代に」
求人難を反映して、初任給を引き上げる動きが顕著です。
北見式賃金研究所は、平成27年に入社した人の初任給を調査しました。顧客の中で、愛知県下の中小企業(従業員300人以下)である104社の初任給データを入手しました。その中で19社が前年よりも引き上げており、約2割に達しました。
大卒男子の場合、20万8千円が相場でした。上(上位25%)は22万円、中(中央値)は20万8千円、下(下位25%)は20万円でした。
高卒男子の場合、17万3千円が相場でした。上は18万2千円、中は17万3千円、下は16万5千円でした。
大卒女子の場合、20万円が相場でした。上は20万9千円、中は20万円、下は187千万円でした。
高卒女子の場合、17万円が相場でした。上は17万7千円、中は17万円、下は16万5千円でした。
特に大卒の初任給を引き上げる動きが顕著です。
給与というものは、単に金額だけではなく、内訳も重要です。求職者が、その初任給の金額と内訳を見て、どんな印象を持つかが問題です。
例えば、こんな初任給も目にしました。初任給20万円なのですが、その内訳は「基本給13万円+付加価値手当2万円+業績手当5万円」となっていました。求人票を見る学生にしてみれば「付加価値手当とは何? 業績手当は業績が下がったら無くなるの?」などという疑問が沸くことでしょう。特に意味が無い手当ならば基本給に組み入れた方がスッキリします。
各種手当の中で、今後クローズアップされるのは「みなしの時間外手当」です。この「みなしの時間外手当」は「定額時間外手当」とも言われています。
この手当がありますと、例えば「初任給20万円ということで入社したら、実は基本給が18万円で、みなし時間外手当が2万円だった」などという不満が起きかねません。
そこでハローワークも問題視をするようになりまして、求人票には「○×手当は時間外労働の有無にかかわらず固定時間外手当として支給し、○時間を超える時間外労働分は追加で支給する」などと記載するように指導し始めました。
そこで問題になるのは「みなしの時間外手当」を除いた基本給の金額です。会社によっては、「みなしの時間外手当」の部分が大きいので、それを除くと、貧弱な初任給になってしまうのです。北見式賃金研究所の調査に基づく前述の初任給には、問題の「みなしの時間外手当」が含まれています。それを除外しますと、多くの会社が求人の土俵に登れなくなってしまいます。この手当を採用しているのは、卸売業の営業外勤、製造業の商品開発、小売業の店頭販売などで目立ちます。今後、この問題に多くの中小企業が直面することになるでしょう。
経営者に問われるのは、労働基準法に基づいた、曖昧さの無い、わかりやすい給与の払い方です。