給与トップ> 給与のココが問題!Q&A> 管理職手当に関する相談> 「課長にだけはなりたくない」と社員がいってきた

給与のココが問題! Q&A

社長 給与の問題で困ったことになっています。

若くて将来性のある社員がいて、働きぶりも良いので、係長から課長に昇進させると伝えました。もちろん管理職手当も増えます。本人は喜んで「頑張ります」と張り切りました。ところが翌日です。本人が暗い顔してやってきました。「妻が管理職手当の額を聞いて、反対しているので課長の件はなかったことにしてほしい」というのです。

妻は「管理職手当が増えるとしても、逆にそれ以上に残業代が減るのを心配している」そうで、課長なんて絶対嫌だというのです。私は一時的に給与が減ることがあったとしても、その後の昇給や賞与で報われると説得しましたが、いうことを聞きません。

北見 ナルホド、よく耳にする問題ですね。ところで、貴社の役職者に対する管理職手当はいくらですか?
社長 部長 7万円
課長 4万円
係長 2万円
主任 1万円
北見 管理職手当をもらって、残業代がなくなるのは、どこからですか?
社長 課長からです。課長は管理職手当をもらうので残業代を出していません。係長までは残業代が出ています。
北見 具体的に社員の給与の例を上げて下さい。管理職手当と残業代の関係が気になります。
社長 この課長昇進を断ってきた係長の先月の給与は次の通りでした。係長の管理職手当は2万円です。
基本給25万円 管理職手当2万円 時間外手当5万円 給与の総額32万円
また、その人の前に課長に昇進した同年代の人の給与は先月次のようでした。課長の管理職手当は4万円です。
基本給26万円 管理職手当4万円  給与の総額30万円
北見 その人は、この手当の差を問題にしているのでしょうね。「係長手当+時間外手当」が「課長手当」よりも多かったら、課長昇進を嫌がるのは、当たり前です。これでは昇進昇給どころか、明らかに減給です。
社長 そうですか、やはり課長の管理職手当が低過ぎますか?
北見 管理職手当の額も問題ですが、基本給も気になります。課長に昇進する際に、ひょっとして基本給を上げていませんか?
社長 もちろん上げています。課長に昇進すると、職能資格制度の等級が上がって昇格するので、基本給も少し上がります。
北見 その職能資格制度が問題を更に大きくしているのです。いくら基本給を増やしても、それは社内ではシークレットです。だから管理職手当の額だけが話題になってしまう。そうなると、課長になって管理職手当が付くようになっても、残業代がなくなったら逆に損だという不満だけが社内に流れるようになってしまう。
社長 ということは管理職手当だけでなく、基本給の仕組みまでも問題だと言うのですか?
北見 そうです。そのような給与の制度では、これから厳しくなる労働法規に対応できなくなるでしょう。中途半端な管理職手当を払っていて、名ばかり管理職だとみなされると、とんでもない残業代の支払い命令が出かねません。大きなリスクです。
<給与の実践コンサルタント北見昌朗のホンネのつぶやき>
「それにしても最近の管理職の残業代に対する労働基準監督署の指導は厳し過ぎる。管理監督の位置付けは社内の問題であり、行政がそこまで介入するべきではない。これまで管理監督者の問題で特に何も指導してきたことがないのに、突然打って変わったかのように厳しい指導をすることに、産業界は困っている。国際競争力の維持という観点までもった上で労働行政は行われるべきだ」