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名古屋商工会議所の会報誌『那古野』(平成29年7・8月号)に北見昌朗が記事を投稿しました。

第3回 経営にズシリ! 労基法改正に注目を


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労基法改正が議論の的になっています。その改正のポイントは、残業時間の上限設定です。

「基本の基」からおさらいしましょう。そもそも労働時間は1日8時間、週40時間以内と定められています。「努力義務」ではありません。「残業代さえ払えば良い」というわけではありません。

時間外をさせるには、「36協定」という労使協定を労基署に届出する必要があります。その36協定の上限時間は「1ヶ月45時間」「1年間360時間」と大臣告示で定められていました。これが「大臣告示」ではなく「法定化」され、罰則も設けられる方向です。

また、36協定の上限時間を超過する場合には「特別条項」を付記することが必要です。その特別条項は「年6回まで」と定められていただけで、上限時間の制限はありませんでした。労基法改正案では「年間720時間まで」などと上限を設ける方向です。

この労基法改正は、大きな意味を持ちます。法令違反で時間外をさせた場合は即「違法残業」になり、バッサリと処分されかねません。

私は、この労基法改正が経営に大きな影響を与えると想像します。そこで「残業720時間ショック」と名付けました。「ショック」という言葉も過言ではないほど衝撃的です。

例えば、宅配便の運送会社をイメージしてみましょう。その日はクリスマスイブの12月24日で、倉庫にはケーキが山積みされていました。猫の手も借りたい状況ですが、従業員は口を開きました。「パートだから年収制限でもう働けません」「先月でもう上限に達したので残業はできません」「課長の私も超過できませんよね」。そう言われてしまったセンター長はもう真っ青。そんなことで結局ケーキを配り終えられませんでした。

さて、翌日です。ケーキが届かなかったことに顧客は怒り、クレームの嵐です。

それから給料日です。ドライバーの奥さんは、給料が減ったことを夫に文句を言いました。「あなた、今月の給料低いじゃない」「だって残業させてもらえなかったんだ」「これでは生活できないと会社に言ってよ」。

人ごとではないことをおわかり頂けたと思います。世の中には山谷のある商売があります。例えば百貨店の中元歳暮とか、ショッピングセンターの年末年始営業とか、夏場のアイスクリームなどは、従来と同じやり方では難しくなると想像します。

法改正の動きをじっくり見守りながら、自社にどんな影響があるのか、どう対応するべきなのか真剣に考えていく必要があるでしょう。

「働き方改革」については、このコーナーでも連載します。

話のポイント
●36協定を出さずに残業させると「違法残業」に
●36協定の上限時間を超過すると「違法残業」に
●ビジネスモデルの見直しが求められるかも